引力
動物病院からの帰り道、前を歩いていた知らないおばさんが振り返りました。
なんだろう?と思っていたら、空を指して教えてくれました。
「月食(*^_^*)」と。
振り返って空を見上げると、月が欠け始めていました。
月に背を向けて歩いていたし、地面(主にワンコ)ばっかり見ていたから一人じゃ絶対気が付かなかった。
「気が付かなかった…!ありがとうございます」
素直にお礼が口からでました。二言三言おばさんと会話したあと別れ、何度か振り返って月を仰ぎました。
帰り道の公園にも観客がいたし、マンションのベランダにも観客がいました。
周りはこんなに天体ショーに沸いていたのか。
気が付かなかった騒めきに、ここ最近の自分はいかに周りが見えていなかったのかと思いました。
そういえば、月を見上げたのも、随分久しぶりだった。
上を向かせてくれたおばさんに感謝。
そして、別の人ともお話ししました。うちのワンコにも私にも、にこにこ笑顔で、本当に嬉しそうに話をしてくれました。その出会いにも感謝。
その引力を当ててくれた、月に感謝。
いつも外に出るきっかけをくれるワンコに感謝。
9時ごろだったかな
再びワンコの散歩に外へ出ると、月は大分と光を取り戻していました。
今日は久しぶりに、ほんの少しだけ心にスイッチが入った気がしました。
このところずっと接触不良で、スイッチが壊れっぱなしで、何をしても何を見てもただ通り過ぎるだけだったので、今日はちょっと嬉しかったのかな。
そういえば、職場以外で人と話すのは久しぶりだった。
しかも、すごい笑顔で話してくれる人なんて、もっと久しぶりだった。
職場でも、友人だった人とのいざこざがあってから、誰とも心から笑いあってない。
人を傷つけるのも、自分が傷つくのももうやだな。
それから、親しくなると相手の中に土足で踏み込むところがあるらしいので、私はそれをしたくない。次にしてしまうのが怖い。無意識に良かれと思ってやった結果がその行動であることが多い。そうして相手の怒りを買い、相手を失う。
他にも、多々ある。言葉の使い方も直したい。マイナスの言葉も使いたくない。
調子よくプラスの言葉を並べるならいくらでもやってのけるけれど、それは本当の自分の言葉ではないらしい。
心からの言葉で、自分の意思で声を発したい。
そう思うと、一気に気分が悪くなった。
自分の中に自分として発したい言葉がないことに初めて気が付いた。
この感覚は、ずっと幼いころに感じていたものだ。
これ以上踏み込んでほしくないと、はねつけられて吐き気がする。
発言するという行動なんて必要ない。
私の中で不機嫌な子供が私をじっと見てた。
自分の最悪さにはもうウンザリなので、人とはもう関わりたくない―――とは、過去の私がよくいう台詞。なにやったって上手くいくわけない。適当にやっていけばいいのに、と。
今の私は、人とのかかわり方というのを、学びたいのだ。
大人になった今更だが、今から、子供の頃にできなかったことを、学ぼうと思う。